2013年1月21日月曜日

悲しい熱帯魚

ひとつしかないATMを
10分以上独占しているオバさんがいた。
私が並んでから10分ってことは、その前に並んでいる人は
何分待っているのだろう。
遅いですね、なんて会話しながら
「声、かけましょうか?」と息巻く私をとめられる。
ああ、気が付くと、私の後ろに3人並んでいる、ということは5人並んでいる。

もう声かける!とめないでッと突入しようとしたところ
おばさんがでてきた。
頭を下げるだけでスミマセンの一言もないし
寒空の中待つ5人を見て焦りもしなかったので
じっと顔を見て、歩き去るおばさんの後姿をしつこく見続けた。
「薬局の人ね」
私の後ろの方が言った。
「人が後ろに並んでる時に、ひとつしかないATMを占拠し続ける神経がわからないんです」
と聞かれもしないのに真顔で言った。
言ったそばから私の前の人が出てきた。

あわてながら入った。
おばさんをにらむのに夢中で通帳もカードも出してなかったのだ。
てんぱった。古いタイプのATMらしく、通帳のみでは引き落とせず
さらに、てんぱった。
這う這うの体で外に出ると
「あわてたでしょ」と笑いながらいわれた。スミマセンと言いながらでへへとなるしかできなかった。

善良な市民でありたいと思うのに
怒りっぽいばかりに、最後には私がモンスター市民になってしまう。
どこでもいい、穴に入りたかった。



ところで、私が、フォローすると退会してしまうという
悲しいジンクスがあります。
やはりモンスター市民だからでしょうか。



けさくしゃ 畠中恵
江戸時代の大ベストセラー作家、柳亭種彦という実在の人物を主人公にした小説。
作者いわく、種彦よりも江戸時代の出版業界というものを書いてみたかったそう。

ふる 西加奈子

20冊目の単行本らしい。すごいなあ、、
主人公花しすは、2歳年上の女性とルームシェアしている。
仕事はAVのモザイクかけ。
花しすの趣味はICレコーダーで会話を録音すること。

過去と未来が交差して、花しすがICレコーダーを聞いているとき
自分と人生を愛しているように思えた。


ことり 小川洋子

しゃべらない兄の影響で、ことりがすきになったことりのおじさん。
彼の静かな人生が丁寧に書かれているのだけど、